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ワタリウム・ミュージアム
東京都渋谷区神宮前3−7−6 TEL 03-3402-3001
開館時間:火曜日―日曜日 11:00-19:00 (水曜日は21:00まで)
http://www.watarium.co.jp

 渋谷区神宮前のキラー通りにあるワタリウム美術館は、現代美術が好きな東京在住者にとっては欠かせない美術館の一つだ。近所にはアート系ブックショップのナディッフなどがあって、ときおり散策するには絶好の場所だ。やはりアートとファッションはいつも緩やかにつながっていてほしいものである。何といっても一度入場料を支払うと、そのイベントの期間中は何度も入場できるところが良い。
 そのワタリウムが、2002年11月29日から2003年4月6日にかけて『ヘンリー・ダーガー展』を開催した。ヘンリー・ダーガーの作品をじかに見るのは2001年秋のアール・ブリュット・コレクション以来、2度目となる。アール・ブリュット・ミュージアムではキヨコ・ラーナーさんから寄贈された数十枚の絵画が、比較的狭い一室にぎっしりと並べられて、あたかも病院の屋上に干されたシーツのようだった。確か、ダーガーの綴った物語に関する説明はどこにもなかったような気がする。ダーガーのドローイングは彼が著した超長大な物語の挿絵なので、その粗筋や部分的な抜粋が掲示された方が効果的に決まっている。その点ではワタリウムの展示方法は高い評価に値いしよう。
 ダーガー作品のみならず、アウトサイダー・アーティストの作品は、絵画だけというより、絵画と文章が一体となった絵物語であることが多い。巨匠アドルフ・ヴェルフリしかり、ヘルマン・メーベスしかり。それはエクリ・ブリュットを含んだアール・ブリュットであり、決して切り離すことのできない一体化した創造物だ。
 ダーガーのドローイングは挿絵と書いたが、ただの物語の添え物に過ぎないかというと決してそうではない。挿絵だけでも彼の妄想がじゅうぶん生々しく伝わってくる。たとえばカラフルな傘、あるいは海中を漂う艶やかなクラゲに似たキノコが林立するこの世にない風景。実に可愛らしいしぐさを見せる同じ格好の少女たち――彼が雑誌の写真をトレースして描いた永遠の処女だ。彼女らは磔刑台の上に裸で縛りつけられているが、なんと股間には、あるはずのないペニスが剥き出しになっている。彼女たちは淡い色調の背景をバックに唯一鮮烈なまでに赤い血を流す。人体外部は手足をもがれたセルロイド人形のようなのに、ぶちまけられた臓物はやけになまなましい。どうやら彼は医学書の写真かイラストをトレースしたようで、そのちぐはぐな描写がかえって奇妙な効果を生んでいる。
 それにしても少女の首を素手で絞めるシーンがやたらと出てくる。大島渚の映画『愛のコリーダ』にもあった通り、愛する者の首を絞めることは、多くの人のとまでいかなくても全体の数パーセント(数十パーセント?)を占める人の心の奥底に秘められた、禁断の欲望ではなかろうか? 
 彼は病院で何十年も清掃夫を続け、1人暮らしのアパートに戻ると、あたかも家人がいるかのように振舞っていたという。1万5千枚にもわたって綴られた物語には、そんな孤独な男の秘められた欲望が随所に顔を覗かせている。

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