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アウグスト・ナッテラー (August Natterer)
ショルノイテ(独) 1868年生 ― ロッテンミュンスター(独) 1933年没
 アウグスト・ネター : 奇跡の羊飼い

 アウグスト・ナッテラーは1868年に銀行員の息子として生まれた。家族に神経性・精神障害は見られなかった。技術者になるため7年間学校に通った。その間兵役に就いたが彼曰く「興味がなかった」ので出世していない。
 彼は旅が好きでスイス、フランス、さらにはアメリカさえも旅行している。ドイツのいくつかの街でメカニックとして働いた後、1897年にある大学都市に仕事を見つけて10年間そこで暮らした。
 彼は子どもの頃から強い性的欲求を持っていることで悩んでいた。結婚はしたものの、優しく洗練された妻を崇敬するあまり夫婦生活はなく、代わりに娼家通いを繰りかえした。
 1907年春、ナッテラーはあらゆるものに興味を失い、仕事に熱が入らなくなって医者に相談。夏の間に彼の症状はますますひどくなり、ついには自分の手首を切ろうとして病院に担ぎ込まれる。いつも胸や胃の中を箒で掃除されているような感覚があり、30分に1万以上にのぼるイメージが次から次へと光のように明滅することがある、と自分の症状を語った。
 やがてナッテラーの妄想はシステマティックになっていく。彼の祖母はナポレオン一世の娘で地方の王家とずっと関係を維持している。自分はナポレオン4世であり、フランスとドイツから独立した「マルキーズヴォルグシャフト」という国の支配者なのだと語った。また、出会う女性はみな妻が扮装しているのだと思いこみ、この上ない崇敬とエロチックな感情を同時におぼえるのだった。
 
  1911年からドローイングをはじめ、「反クリスト」「予言者」「キャノン砲」「聖トーマス」「雲の中の神の精霊」というタイトルをつけている。1917年に行ったナッテラー自身の説明によると「聖トーマスはニセ予言者の形をした神の精霊である。 1907年11月初旬に罪深い人類に対する最後の審判を下すために降りてきた。私はこの知られざる精霊を不信心の精霊トーマスと名づけた。彼の姿は3つのコンマから成るTの形に似ており、頭は42センチ砲の砲丸である……」。

参考文献:Artistry of the Mentally ill

 

 

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